Difference between revisions of "Evangelion Anima 2008 01"

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This is the first actual chapter of [[Evangelion Anima]] published in the January 2008 issue of Dengeki Hobby Magazine.  
 
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強化加遠された重粒子は敵ATフィール彊を瞬時に相殺、目標物を破壊する。
 
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"Making something... Nurturing something is really great. You can see and learn so many things from the process."
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This is the first actual chapter of Evangelion Anima published in the January 2008 issue of Dengeki Hobby Magazine.

Original Japanese Text

Page 165

"Page 165 illustration by Hiroyuki Utatane"

TV・劇場版と異なる展開を見せる 架空世界版エヴァンゲリオン「ANIMA」。 ANIMA世界のシンジたちはいかに戦い ネルフを壊滅から救ったのか? いま、TV・劇場・新劇場版と すべてのエヴァ世界の根幹を支えてきた メインデザイナー山下いくとが 新たなるエヴァの物語を紡ぎだす。


少年たちは17歳になった…


誰も見たことのない


未来の “エヴァ“ がここにある


3年後


※この物語はアニメーション作品「新世紀 エヴァンゲリオン」の25~26話の人類補 完計画が発動されず、異なる未来を迎え た碇シンジたちの世界を描いた作品です。


イラスト:うたたねひろゆき

彩色:蘭宮涼

Pages 166-167

"Page 166-167 illustration by GAS and Masanari Kakuta"

STORY

…その分岐点から

ネルフ特殊監査部所属・加持リョウジの活躍により、ゼーレのネルフ日本本部侵攻は事前に発覚した。そして明かされた驚くべきゼーレの正体と人類補完計画の全貌は、国連および日本政府に衝撃を与え、予定されていた戦略白衛隊によるネルフ本部侵攻は中止とされた。とはいえ、組織内に浸透しているゼーレの細胞の暗躍により、日本政府、国連はともに混乱の極みに達していた。そのため具体的な支援策は遅遅として進まず、ネルフ本部は何時訪れるかもしれないゼーレとの決戦に独力で対応せざるを得ない状況となっていた。

予測されるネルフ本部へのゼーレ急襲戦力の中核は、中国を始めとする各ネルフ支部で調整中に消息を絶った5機以上の量産型エヴァンゲリオンだ。それもネルフ本部が把握していない、ゼーレ秘匿技術による対エヴァ用武装強化が行われている公算が高かった。ネルフ本部で現在稼動中のエヴァンゲリオンは初号機のみ、零号機はロスト・再建中、弐号機は先任パイロットの不調により運用が危ぶまれる。戦力差は歴然だった。

ゼーレの介入により表向きは凍結されていた「ATフィールド偏向制御運用実験機=通称・F型エヴァ」の実戦化が加速される。緊迫化していく状況の中で、シンジたちは、それぞれが最善を尽くし義務を果たしていくのだった…。

戦闘汚染区 ――初夏

アスカ・ラングレーは、華著なタウンサイクルで汚染区へ入った。ぴりっとした陽射しの中、風を切って走るのは心地よい。が、周囲は見渡す限り赤茶けた荒れ野だ。

昔はきれいな森だったんだけど。――アスカは眩しげな目で辺りを眺め、視界の隅に光学フィルタの閃きを捉えた。

知能化(AI)センサーさん、24時間勤務ご苦労さま。――彼女は戦略自衛隊の物々しい警戒ぶりに少し笑う。いま、AIセンサーはレーザで彼女を走査(スキャン)し、「チルドレン」しと確認したのだろう。

今日のお出かけは、『スイカ畑の偵察』が目的だ。

あいつ。――アスカはいつ考えても”こっちゃ“になる難問を、また想いうかべる。――なんで加持さんの真似するの? まあ、許すけどさ。……って、なぜ許すのよ? 私。


碇シンジは、去年からスイカを育てている。

畑が誰かに荒らされる心配はない。ここはエヴァの血に染まった戦域で、戦自と”汚染“のウワサがスイカを守ってくれている。

シンジは水やりの手を止めて、彼方の山々を眺めた。人と”シト“が揮った暴力で姿を変えた稜線から、わずかに”石棺“の天蓋が見える。昔、ジオフロントのあった所だ。

石棺は高力絶縁材で組まれた軽いドームで、内部を高真空/低エネルギー状態に保っている。人には理解できない理由で、中にある”もの“が暴れださないように。

三年前のあの日。――シンジは、もう幾度めか、同じ記憶を辿りはじめる。――きっと、ぼくはリセットされたんだ。...

状況『Ultimo』 ――プラス14分

「シンジ君、心を静めて! 偏向ATフィールドの制御マージンを超えるわ! 」

ミサトの声。同時に、幾つも開いているディスプレイの一つ、インタフエイス画面が明滅し、シンジに警告を送る。

いま、残像を曳いて疾走する初号機のS²機関は、重攻撃原潜四隻の核出力を超えるパワーを発揮している。熱交換素子からの凄まじい排熱は高温大気を生み、素子アレイが積層された背面装甲は、風に巻かれた陽炎で揺らめいて見える。

エヴァを制御するため、人が付け加えた機械の出来は悪い。機関出力の二割強、原潜一隻分のエネルギーは伝達ロスで無駄な熱に変わる。だが、素体――エヴァ本体のエネルギーロスはゼロ。むろん既存の物理法則では、あり得ない数値だ。

長大なストライドを描き、0・2秒サイクルで駆ける脚が着地する寸前、木々がなぎ払われ、岩を押し潰して、何かに圧縮された平地が現れる。それはエヴァの着地衝撃を受け止め、紅い多角形のモアレを閃かせる――ATフィールドだ。

初号機のF型装備は、フィールド偏向制御の試験装置でもある。シンジはATフィールドを足下に展開し、強固な地盤代わりにした。大面積のフィールドは、戦車の1万4000倍あるエヴァの接地圧や、跳躍め衝撃で地盤が崩れるのを防ぎ、脆弱地での高機動を可能にしてくれる。

初号機は秒速93メートルで戦域へ突入した。直接視界(LOS)が一気に開け、森林に散開した純白のエヴァ量産機と、擱坐している真紅の弐号機がシンジの目に飛び込む。頭部をロンギヌスの槍で貫かれた弐号機の姿は、まるで不気味な宗教画だ。シンジは情報リンクが途絶している事も忘れ、叫ぶ。

「アスカぁっ!」

308ぺージへ続く

Pages308-310

『第壱話 スイカ畑の追憶 ネルフ日本本部急襲』

"Page 308-309 illustration by Ikuto Yamashita"

STAFF

制作総指揮・メカデザイン・イラスト:山下いくと

キャラクターデザイン:うたたねひろゆき

ノベライズ:陰山琢磨

プロップモデル製作:GAS、角田勝成

企画補佐・文芸:柏原康雄

編集担当:尾上一等・島谷光宏

協力:バンダイ ボーイズトイ事業部

戦闘汚染区 ――初夏

電動四駆のトレッドが砂を噛む音と、「やほぉ」という呼びかけで、シンジは”今“に戻った。振り向くと、無愛想な形をした戦自の野戦車から、葛城ミサトが降り立つところミサトは腕組みし、わざとらしくシンジを検分した。

「背、また高くなった? やっぱ、男の子はでかくなるわ。……結構いい男になりそ――かな? うん、楽しみ」

いま彼女は、戦自統合幕僚本部とネルフをスムーズに連携させるため飛び回っている。立場は幕僚本部付将補だが、内実、ネルフ側が無理を通せるルート造りに励んでいるらしい。

「もう『うん、楽しみ』ネタは聞き飽きちゃったよ」

「おお、素早い口応え。オトナになったね」

ミサトはシンジの側に立ち、彼が眺めていた方角を見る。

「また、思い出してた?」

状況『Ultimo』 ――マイナス50秒

「葛城二佐。――ブリーフィング結果は」

「エヴァ・パイロット及び、各課幹部へ行いました。人類補完シミュレートには、皆が打ちのめされたようです」

「政府も同じだ」碇司令は言葉を切り、ざらついた声で笑う。「加持はよく働いた。――行政府の連中も”個“を失いたくはない。もしゼーレに怯えて、傍観を決め込んでも……」

「待っているのは、物理的な白己の喪失ですね」

「そうだ。機動支援グループのシステム立ち上げは?」

「エヴァ戦闘データ及び、整備、機材データとも、超並列コンピュータの増設バンクへ移植完了。超並列は82両の装甲車に分散配置し、生存性を確保しました。整備機材と拘束装置の積載は、あと9時間で完了します」

 碇司令は肯き、公式レコーダに目を遣る。

「いま、02:35。貴官に、ゼーレ来襲時の状況発令権限を与える」

「ヴァンプ弾着! 部分軌道及び、低伸弾道爆撃。弾着数2024発、12秒で4波。本部とのリンク途絶、しかしシミュレート・モデルはジオフロント内に損害なしと予測!」


権限委譲から未だ26時間、ずいぶん早いお出ましね! ――弾着の衝撃に、激しく振動する車内でミサトは毒づく。

ミサトたちの重装甲車は、既にジオフロントから40キロはなれていた。が、ゼーレが放った一撃は想像を絶していた。

「センサー群は壊滅と判定。あれだけ防護しといたのに!」


「配置はバレバレだものね。いまどき動かないモノは生き残れない。機動支援グループは?」

「健在です。車両間情報リンク回復まで――いま35秒」

ジオフロントは大丈夫。いくら凄くても”人“の攻撃だもの。あの装甲区画は、シトかエヴァでなければ壊せやしない。さて――ミサトは息を整え、平静な声で告げた。

「上級指揮官命令により、状況『UItimo』を宣言する。全作戦、エヴァ支援シスデムの指揮権は本職へ委譲された。以上、情報リンク回復しだい、機動グループへ伝達して」

『Ultimo』は、ミサトが与えられた発令コードだ。

発令後は、数百平方キロに散った機動グループの編む情報ネットワークがエヴァ支援に当たる。むろん、分散機動とジオフロントのどちらが安全かなど、誰にも分からない。

「方位2400ミルに大型全翼機、エヴァ搭載機と推定!」

「零号、初号のF型換装は? 」

「リンク途絶、現況不明。予定射出時刻は、初号470秒後、零号は620秒。予測モデルは、各々プラス116秒/Minと言ってます。リンク健在のエヴァは弐号機のみ。……あ」

エヴァの遠隔管制をしていた伊吹マヤは、息を呑む。

「地底湖の弐号機、アスカのシンクロ率上昇中。ハーモニクス、偏差を超えるスパイクなく安定。……あの見当識レベルで、信じられない。いま29パーセント、38……53」

震える声で報告するマヤをさえぎり、アスカからの着信。

「ミサト! 行けるよ! 獲物は量産機?」

心理解析モデルを見なくても、声を聞けば分かる。あの高慢ちきな子は帰ってきた。……でも――ミサトは逡巡したが、保護者の不安より、野戦指揮官の判断を優先する。

「弐号機出撃、遅延戦闘。零号、初号の状況は、逐次送信」

「軽ぁるく、あしらってやるわ。見てて!」

「匍匐飛行(NOE)で近接する新たなヴァンプ! いや、識別信号(IFF)確認。戦白の無人攻撃機(UCAV)、十数機……いま、リンク確立しました」

自律するUCAVから送られてきたのは、センサー投下予告だった。知能化された、新型の機動装甲センサーらしい。

さて、センサーで見てるだけ、なんて事はないでしょうね。出方によっちゃ、エヴァで官邸を制圧しちゃうよ。――ミサトは凄みのある笑みを浮かべ、考える。その時、中央ディスプレイの画像が切り替わった。

「敵エヴァ降下! 」

戦闘汚染区 ――初夏

アスカは、愛車のサイドバックから保冷パックを取り出し、スイ力畑へやって来た。彼女は自分のワンピース姿に見とれるシンジに、とりあえず、「どこ見てんの」サインを送り、素早くミサトに向って敬礼を決める。

「将補閣下、我が具申の改修装備に付き、ご裁可は……」

「はい、そこまで。”しょーほ“って呼ばれるの、なんか」

「むずむず、する? 子供の意地悪だよ。これ、おやつ」

「もう子供で通せる背格好じゃないわよ。……あら、さすがにクォータ。しばらく見ないうちに、また胸が」

「もう『胸』ネタは聞き飽きたってば!」

状況『Ultimo』 ――プラス15分

「戦自より通告! 投下AIセンサー群、戦域情報ネットワーク構築完了。データリンク――いま! 戦自は、指向……」

「初号機突入! LOS画像受信、敵量産機、展開中!」

ミサトはコンソールの端を爪が剥がれそうなカで握り締め、初号機と同じ視野が広がるスクリーンを凝視する。

なぜ気付かなかったの? ゼーレの方がS²機関に習熟してて当たり前じゃない! 素体の再生も早くて当たり前、それに、連中がロンギヌスの槍を試作している情報も入ってた。ゼーレにとっても、これは決戦。なら、試作品だろうが.有るもの全部つぎ込むのは定石じゃないの! ――身を焼く怒りに苛まれているミサトを、マヤが不安げに覗っている。指示を待っているのだ。

マヤの視線に気付いた、ミサトの中の”将校“は、焦燥と自責の念に破綻しそうな”人の心“へ皮肉の楔を打ち込む。

戦術も立てられず、何の命令も下せないなら、とにかく指揮官らしく構えていたら?ただ。――ミサトは歯を食いしばる。――まだ終わりじゃない。秘匿行動を命じておいた、綾波の零号機が無事なら、必ず勝機(チャンス)が目の前を過ぎる。絶対見落としちゃだめ!

「……行ける」突然、ヘッドセットに日向マコトの声が入る。彼はミサトのコンソールへ、試作シミュレートモデルをブレーク・インし、怒鳴った。「野戦指揮官へ意見具申!」

ミサトはモデルを一瞥して息を呑む。

「戦自のAIセンサーは、戦域の多方向から量産機を精密にスキャンしています。ロンギヌスの槍は無敵でも、連中はそれを投擲しなけりゃ……。ここに対シト戦での、綾波の投擲パターンをモデル化して当てはめれ……」

「OK! ビールをおごるわ! 青葉君、初号機とのリンク、以降、途絶不可。厳命する!」

「離しゃしない、任せてください!」

ミサトはいっせいに動き出したスタッフたちを見渡す。

なんて勢いで未来予測モデルを立ち上げたの。センサー情報とのリンク、システム構築……やるわね。戦自やゼーレの電子戦闘員でも、ここまで速くはない。――ミサトは短く笑う。――見つけた勝機は逃がさないよ。


生物学的に洗練された、白亜の巨人は全9機。エヴァ支援ネットは刻々変わる激位置を教えてくれるが、何の策も授けてくれない。だが、シンジにも支授を乞う余裕などない。

いま、彼の眼中にあるのは、欄坐した弐号機のみ。たとえ初号機が切り刻まれても敵の阻止線を突破し、アスカを救うこと以外、何も考えられないのだ。

突如、LCLを介した警告音が、ダイレクトにシンジの一次聴覚野を打つ。そしてシンジを阻止するように、眼前にディスプレイが開いた。

《JSSDF/Link23/CAI.Net/ 注意! 黒機とのリンクは上級司令部合意による。強制リンク切断は自動否認される》

「シンジ君! 戦自が情報支援に当たるわ。指向性のハイパワー電子/光学妨害もやってくれるみたい。――ま、それだけだけど。こっちで解析した敵攻撃予測モデルをフラッシュで送る。見落とさないで、気を抜いたら死ぬわよ!」

エヴァ支援ネット内の超並列は、戦自のAIセンサー情報を解析し、予測モデル化するたび精度を増して行く。それは槍の投擲姿勢に入ろうとする量産機を瞬時に識別し、シンジへ警告する。しかし敵は多く、判断の猶予は数ミリ秒だ。

対する量産機は、実時間ゼロの精神波リンクでシンジを追いつめ、なぶり殺す実力を持っていた。しかし、人が加えた拘束装備や、人に送信するためのセンサー類が、強力な電子/光学妨害でダウンし、本来の”速さ“を発揮できない。

LCL接続で、運動感覚がエヴァサイズに拡大されているシンジは、機動限界のアクロバットを続ける。しかし初号機を髪一筋で外れた槍が、瞬時に脱出速度に達して大気圏を去る、恐怖の衝撃波を、二度”肌“で感じた。


警告音と共に表示された戦域図が、量産機の阻止線を突破したと告げる。前方正対の姿勢を取ると、すぐそこに弐号機。

「アスカ! 大丈夫? 状況を……」

近距離レーザ回線を開いてシンジは呼びかける。だがそれに応えたのは、半ば悲鳴に近い叫び声だった。アスカは、大破した弐号機と壊れゆく白分を再起動するため、精神力の全てを注ぎ込んでいたのだ。

再び、警告音と共に戦域図が視界へ割り込む。9機の量産機は、瞬時に二人を包囲していた。槍を持つものは5機、残る4機も、素手で初号、弐号機を解体する構えだ。

時間を稼がなくちゃ、一ミリ秒でも。――シンジは、綾波が無事でいることを祈る。――防御じゃない、攻撃だ!

言葉より速く、大脳辺縁系――人が原始から受け継いだ”殺し“の領域が、兵装起動を行う。メニユー表示に8ミリ秒、アイポイントで選択。同時に音声コマンド――LCL中では筋電位センサー入力のため、発声するより遥かに速い。

「S²、全ボルトへ無制限入力!射出(パーシ)!」

F型装備の両肩装甲ブロックが弾ける様に開き、漆黒の球が覗く発射機が現れる。球体は逆位相空間を含包したATフィールドで、亜光速の電子束を、鉄塊に匹敵する密度で封じ込めている。だが、S²機関と同様に、入力、増幅の原理は未解明。つまり極限領域でなにが起きるか誰にも分からない。

インパクトボルトが飛散すると、量産機たちはすばやくATフィールドを展開した。が、同じフィールドを外殻とする史上最強のキャパシタは、紅いモアレを閃かせてATフィールドを貫通し、炸裂する。瞬間、激光が戦域を紫に染め上げ、戦白のAIセンサーは4割が焼損し、量産機の光学センサーも全てダウンした。

"Page 310 illustration by Ikuto Yamashita"

解放された高エネルギー電子束は、量産機に襲いかかる。その表皮は爆音を上げて蒸発し、濃密な熱雲となって機体を包む。炸裂位置から量産機までの大気はイオン化して強電界を生み、電子束の飛翔経路に沿って、大地から空へ向かう雷が林立した。

センサーやアンテナ群を焼かれた量産機は、人とのデータ交信が不能になり、そのダミープラグは与えられた行動原理に則って、機体を準拘束状態に置いた。ゼーレ構成員も人に過ぎず、エヴァを完全に解き放つ勇気はないのだ。

しかし、それも長くは続かない。S²機関の持つ驚異的な再生能力は、人がエヴァに付け加えた機器までも修復するからだ。データ交信が回復すれば、自由を得た量産機はシンジたちの屠殺にかかるだろう。

シンジは、自分でも気付かないうちに、末だ槍を持つ量産機から、弐号機をかばう位置に移動していた。手にあるのは、大質量と傾斜機能材の先鋭な刃で敵を両断するマゴロックスのみ。シンジは、みるみる外皮を代謝して修復する量産機を見つめ、差し違える覚悟で襲いかかろうとした。


そのとき、鋭敏な初号機のセンサーが、彼方の山麓で閃く異様なフラッシュを捉えた。コンマ数秒で七回のフラッシュが観測され、量産機のうち7機が、凍りついたように停止する。だがシンジには、何が起こったのか確かめる余裕はなかった。すでに精神波リンクが回復していた残存量産機は、彼よりも素早く事態を悟り、攻撃行動に移ったからだ。一機は弐号機頭部を貫いているロンギヌスの槍を引き抜いて立ち向かおうとし、もう一機は回避機動を行いながら、ジオフロントへ駆けて行く。

弐号機に取り付いた一機は、突き立つ槍に片手をかけ、もう一方の手をシンジに向けて、手のひらに強力なATフィールドを発生させた。シンジは偏向ATフィールドを初号機の左肩に集中し、量産機のATフィールドへ激突させる。多角形のモアレが紅く燃え立ち、初号機の当て身は止められたかに見えた。が、シンジは踏み出した右足を軸に初号機を半転させ、敵量産機の胸元に滑り込み、削ぎ上げるようにマゴロックスを揮った。

ほんの一瞬だったが、シンジは大質量の鋭利な刀身が、表皮装甲から素体の骨格を両断し、ダミープラグを叩き折るのを感じた。一呼吸の間、姿を保っていた量産機の頭部は、首元から頸部にかけてずるりと滑り落ち、地響きを上げて足下の木々をへし折った。

LCL中にも拘らず、”殺害“の興奮に胸郭を膨らませていたシンジに、初号機は停止した量産機7機の画像解析結果を告げる。彼方のフラッシュから「実時間ゼロ」で到達した”何か“が、量産機のダミープラグを貫通破壊したようだ。

ありがとう、綾波。――シンジは戦域外にいるはずの綾波に感謝した。綾波の零号F型装備機は、エヴァ支援ネットから精密な敵位置と未来予測モデルの情報を得て、「天使の背骨」と呼ばれるATフィールド銃で、地平線の彼方から大地と山々を貫き、量産機のプラグを撃ち抜いたのだ。

白兵戦の”熱“からシンジが醒めるのを待たず、初号機のセンサー群は、自律してジオフロントへ向かった一機の索敵を行っていた。しかし、稜線から垣間見えるジオフロントに戦闘の気配はなかった。センサーは温度や放射線のわずかな異常を捉えていたが、それどころではなかった。大破した弐号機から、アスカを回収しなければならないのだ。

弐号機のエントリープラグは遠隔操作され、頚部から半分ほど突き出していた。しかし、いくら救援や助言を求めても支援ネットからの応答はない。排出されたLCLの滴を避けながら、シンジはプラグ側面にある認証パネルを叩く。装置は瞬時に彼のDNA解析を終え、装甲ハッチを開放した。

戦闘汚染区 ――初夏

あの日。――アスカは石棺を眺めながら、思い返す。

私、白分でもよく分からないまま、シンジに助け出された。……なんか、泣いてたような気がする。メディカルチェックが終わって、シンジと会ったのは三日後。

「よぅっく聞いときなさい」とか言って、脚を組んで人差し指を立てて、シンジに講義したっけ。

「その一、私は量産機9機を片付けたエース。その二、なのに突然、孤立無援で死にかけたら、人は”破局反応“ってのを起こすの。分かる?」――その時の振る舞いを思い出し、アスカは心の中で笑う。――完全に子供だね。ダメじゃん。

でも、その日から、シンジ相手なら気取らなくてもよくなった……っても、なんかここ3年、じゃれ付いてるだけの気もするし。それでいいの? シンジ。

アスカは隣に立つシンジをそっと覗い、どきりとした。一瞬、加持の横顔がオーヴァーラップしたからだ。

シンジなんか。まだ子供だよ。加持さんには遠いね。――アスカは評論家ぶって心を静める。


あの日、アスカ救出時に情報支援がなかったのは、リンク不調のためではない。「サードインパクト」つまり人類補完発動の恐怖に、ネルフも戦自も、全てのセンサーとシミュレータモデルを投入して、ジオフロントを探っていたからだ。

戦域を離脱した最後の量産機は、ジオフロントへの突入に成功した。しかしゼーレの期待もむなしく、量産機を”呑み込んだ“ジオフロントは沈黙した。軌道からの画像解析で、そこが漆黒の「卵形境界」に包まれ、”凍り“ついていると分かった。

この現象の解明に役立っただろう、ゼーレ幹部は逃亡するか白害した。同じく研究を率いるべき、碇司令以下のネルフスタッフは境界の内側におり、その履歴には既に《KIA(戦死)》と記されている。

3年前。シンジたちは”見知らぬ明日“へ踏み出したのだ。


次回予告

「ネルフ日本本部防衛戦」がら3年…碇シンジは生き延び、17歳になっていた。戦いのない平和な3年の月日の間も、シンジたちは道を見失うことはながった。そして、迫り来る新たなる敵の予兆…。いまだ姿を見せない「S²機関完全対応型エヴァンゲリオン初号機」。大いなる鼓動が新しい世界の幕開けとなる。

次回「新世紀エヴァンゲリオンANIMA 第弐話:零号機失墜」。

Page 311

"Page 311 illustration by Ikuto Yamashita"

用字用語

エヴァンゲリオン初号機F型

》「ATフィールド偏向制御運用実験機」の俗称。

機体全面にATフィールドを展開することで装甲強化を施し両肩にATフィールド技術から派生した高出力指向性電撃投射兵器「インパクトボルト」を装備した新型兵装。

現場配備されているエヴァンゲリオンでは複数の使徒級兵器の攻撃を受けた場舎対応が難しいことから開発された。

しかし、ゼーレは実験機としては強力すぎるF型建造をネルフ日本本部の造反の予兆と見ており、同機の火器運用を限定的なものに留める用に変更を求めてきた。

ゆえにF型の手は大型兵器の保持ができない形状に改められ小型刺突兵器の「プログダガー」装備のみに留められることとなる。

しかし、ネルフは極秘裏に各種大型火器が運用できるF型改修キットを製作、エヴァ輸送用アームとして偽装配備ネルフ日本本部防衛戦に投入された。


エヴァンゲリオン零号機F型

》使徒アルミサエル戦で大破した零号機よりコアを回収セントラルドグマ内でモスボール保存されていた試作零号機パーツと新造のF型装甲を合わせて再生した。

狙撃専用に特化された機体であり「沈下型領界侵攻銃(フィールドシンカー)=通称・天使の背骨」を装備する。

ATフィールドを銃の中に発生させるために、零号機の石腕と右脚を切断。

そのため機動性は低く、F型装甲の除装もできない。

S²機関は持たず、エネルギー供給は従来通りアンビリカルケーブル経由で有線供給される。

強力な装甲と超射程の砲撃力は零号F型単機での対ラミエル戦(ヤシマ作戦)の再現を可能とした。


天使の背骨

》浸食型こ位相変換したATフィールドに加速した重粒子を乗せ従来のATフィールドの反発力によってさらに加速させ目標に到達させる超遠距離型ATフィールド兵器。

強化加遠された重粒子は敵ATフィール彊を瞬時に相殺、目標物を破壊する。 Italic text